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真言天台勝劣事・第五章 弘法と覚鑁の謬見を破折する

            真言天台勝劣事

       第五章 弘法と覚鑁の謬見を破折する

本文(一三五㌻五行~一三五㌻一二行)
 次に弘法大師の十住心を立てて法華は三重劣ると云う事は安然(あんねん)の教時義と云う文(ふみ)に十住心の立様(たてよう)を破して云く五つの失(とが)有り謂く一には大日経の義釈に違(い)する失・二には金剛頂経に違する失・三には守護経に違する失・四には菩提心論に違する失・五には衆師に違する失なり、此の五つの失を陳ずる事無くしてつ(詰)まり給へり、然る間法華は真言より三重の劣と釈し給へるが大なる僻事(ひがごと)なり謗法に成りぬと覚ゆ。
 次に覚鑁(かくばん)の法華は真言の履取(はきものとり)に及ばずと舎利講の式に書かれたるは舌に任せたる言(ことば)なり証拠無き故に専(もっぱ)ら謗法なる可し。
 次に世を挙げて密教勝れ顕教劣ると此を許すと云う事是れ偏(ひとえ)に弘法を信じて法を信ぜざるなり、所以に弘法をば安然和尚五失有りと云うて用いざる時は世間の人は何様(いかよう)に密教勝(すぐ)ると思ふ可き抑(そもそも)密教勝れ顕教劣るとは何(いず)れの経に説きたるや是又証拠無き事を世を挙げて申すなり。

通解
 次に弘法大師が十住心を立てて法華経は真言経よりも三重に劣っているといっていることについていえば、安然の教時義という書には、十住心の立て方を破折して「これに五つの誤りがある。一には大日経の義釈に相違する誤り、二には金剛頂経に相違する誤り、三には守護経に相違する誤り、四には菩提心論に相違する誤り、五には多くの師に相違する誤りである」と述べている。この五つの誤りについて(弘法の門下は)弁明することができずに答えに詰まってしまったのである。
 それなのに、法華経は真言経よりも三重に劣っていると釈することは大きな間違いであり、謗法になると思われる。
 次に覚鑁が法華経は真言経の履物取りにも及ばないと舎利講式に書いているのは、舌に任せた勝手な言い分であり、証拠がないのであるから、ひとえに謗法となるであろう。
 次に世を挙げて、密教が勝れ顕教が劣っていると認めているということについていえば、これはひとえに弘法を信じて法を信じているのではないのである。
 ゆえに安然和尚が五つの誤りがあるといって弘法を用いないときは、世間の人はどのように密教が勝れていると思えるであろうか。
 そもそも、密教が勝れ顕教が劣るということは、どの経に説いているのか。これまた証拠のないことを世を挙げていっているのである。

語訳
安然(あんねん)
(八四一年~没年不詳)。比叡山の学匠。伝教大師の俗縁といわれる。はじめ慈覚の弟子となり、顕密二教を学び、後に元慶寺(がんぎょうじ)の遍照(へんじょう)について胎蔵界の法を受けた。元慶元年(八七七年)唐に渡ろうとしたが果たせなかった。元慶八年(八八四年)元慶寺の座主となり、更に伝法阿闍梨に任じられた。晩年、比叡山に五大院を建て、著作に励んだ。台密の大成者といわれる。著書は「教時問答」四巻、「悉曇蔵(しったんぞう)」八巻など多数ある。

教時義
 四巻。平安時代中期の日本天台宗の僧である安然の著。正しくは真言宗教時義というが、問答形式をとっているところから真言宗教時問答・教時問答ともいわれる。本書で論ずる真言宗は弘法の東密ではなく、円仁・円珍以来の台密のことで、その教相を理論的に体系づけた書。弘法の十住心論・秘蔵宝鑰などとは対立する台密の教判が述べられている。

大日経の義釈
 正しくは「大毘盧遮那成仏神変加持経義釈」という。十四巻。中国・唐代の善無畏(ぜんむい)述、一行(いちぎょう)記の大日経疏を、一行没後、善無畏の弟子の智儼(ちごん)・温古(おんこ)が大日経疏を再治した書といわれている。日本の東密では大日経疏を用い、台密では大日経義釈を用いている。
〈追記〉
 大日経疏は文章に難があるとの指摘がある。一行は改訂を意図していたようであるが、果たせぬまま死去し、智儼等が再治して大日経義釈を著したという。大日経疏自体、「その一部に一行自身の天台的理解を混入して……」(日本大百科全書(ニッポニカ)といわれるが、大日経義釈は天台教学に通じた一行の意を汲むがごとく、さらに法華経色の強いものとなっている。

守護経
 十巻。中国・唐代の般若三蔵と牟尼室利(むにしり)三蔵の共訳。正しくは、守護国界主陀羅尼経という。密教部の経典。仏滅後に、提婆達多のような僧が国中に充満し、正法の僧を流罪、死罪に行うことが説かれ、陀羅尼の力によって国主を守護することがすべての人々を守護することになると説く。日本では弘法が鎮護国家の法として真言宗に取り入れて講説した。

舎利講の式
 一巻。新義真言宗の祖・覚鑁(かくばん)撰。舎利供養式ともいう。仏舎利供養の講演をまとめたもの。五編からなり、仏舎利が仏の法身の全体であるとし、舎利供養と真言の経を講じて成仏することが示されている。

講義
 ここでは、第三問答での問者の反論、①弘法大師が十住心の階位を立てて、法華経を真言経より三重に劣っていると位置づけていること、②弘法の継承者である覚鑁が法華は真言の履物取りにも及ばないと言っていること、更に③世間一般の人々も、弘法や覚鑁の説に任せて密教が勝れて顕教は劣ると認めていること、の三点について、順に破折されている。
 まず、弘法の説は、叡山の安然の教時義という書において破折され、しかも弘法の門下はそれに反論できないでいることを指摘されている。
 次に、覚鑁の釈は何の裏づけもなく口から出まかせに言ったものにすぎないと一蹴されている。
 更に、世の中の人々が挙げて、弘法や覚鑁を信じて密教が勝れ顕教が劣っていると認めているのは、弘法という人を信じているのであって、その教えを信じているのではないのであるとその本質を指摘され、密教が勝れ顕教が劣るなどという経文はどこにもないのであるから、人々は証拠もないことを妄信しているにすぎないと破折されている。

 弘法大師の十住心を立てて法華は三重劣ると云う事

「十住心」とは、弘法が大日経の住心品と菩提心論に基づいて、衆生の心の相を十種に分類し、これに世間・外道や諸宗を当てはめて、真言宗が最高の教えであるとした教判である。
 最も低い心は①異生羝羊住心(いしょうていようじゅうしん)(異生は凡夫のことで、聖者とは異なる生類で、六道のそれぞれ異なった場所に生まれるから〝異生〟という。羝羊とは雄羊をさす。凡夫が雄羊のように善悪因果を知らず本能のまま悪行をなす心をいう)で、次いで②愚童持斎住心(ぐどうじさいじゅうしん)(愚かな児童のように生死に迷う凡夫善人が人倫の道を守って五戒・十善等を行う心をさす)、③嬰童無畏住心(ようどうむいじゅうしん)(嬰童は愚童と同じ意味で、外道の教えを聞いて、天上の楽しみを求め修行して畏れを知らない子供のような心をさす。外道の住心である)、④唯蘊無我住心(ゆいうんむがじゅうしん)(唯蘊はただ五蘊の法のみ実在するという意味であり、無我はバラモン等で説く霊魂〈我〉はないとする声聞の位をさす。出世間の住心を説く初門で、小乗声聞の住心である)、⑤抜業因種住心(ばつごういんじゅじゅうしん)(業因と種を抜く住心のことで、業因とは悪業の因で十二因縁をさし、種とは無明の種子をさしている。すなわち、十二因縁を観じて悪業と無明を抜く小乗縁覚の住心のこと)、⑥他縁大乗住心(たえんだいじょうじゅうしん)(他縁とは他の衆生を縁とすることで利他を意味するところから、衆生を救済しようとする大乗の心のことで、法相宗の立場にあたる)、⑦覚心不生住心(かくしんふしょうじゅうしん)(心も境も不生即ち空であることを覚る心で、三論宗の立場にあたる)、⑧一道無為住心(いちどうむいじゅうしん)(如実一道心とも如実知自心ともいう。一仏乗を説く天台宗の住心)、⑨極無自性住心(ごくむじしょうじゅうしん)(究極の無自性・縁起を説く華厳宗の住心)、⑩秘密荘厳住心(ひみつしょうごんじゅうしん)(究極・秘密の真理を悟った真言宗の住心で、大日如来の説で、これによって真の成仏ができるとしている)、となっている。
 弘法のこの立て分けでいくと、法華経は天台宗の住心である⑧の一道無為住心にあたり、⑨極無自性住心にあたる華厳経に劣り、更に⑩の秘密荘厳住心にあたる大日経に三重の劣となる。
 大聖人は、釈迦一代五時継図に
「一、真言師・謗法罪を作る事
  秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)の上に云く十住心とは、
  一 異生羝羊心 凡夫悪人     二 愚童持斎心 凡夫善人
  三 嬰童無畏心 外道       四 唯薀無我心 声聞
  五 抜業因種心 縁覚       六 他縁大乗心 法相宗
  七 覚心不生心 三論宗      八 如実一道心 法華宗
  九 極無自性心 華厳宗      十 秘密荘厳心 真言宗」(六四九㌻)
 としてこれを示され、このように法華経を下げる立て方をすることによって真言師たちは謗法罪を作っていると指摘されている。ここで、八番目が如実一道心で先の一道無為住心と言葉が異なるが内容は全く同じである。

 安然の教時義と云う文(ふみ)に十住心の立様(たてよう)を破して云く五つの失(とが)有り謂く一には大日経の義釈に違(い)する失……五には衆師に違する失なり

 弘法の十住心の立て分けに関し、日本天台宗の五代院安然が教時義、正確には真言宗教時義、という著書の中で五つの仏法上の誤り、罪があると指摘していることを紹介されている。
 これは真言宗教時義四巻のうち、第二巻に説かれている。すなわち「五失有る故に十心の次第を用いず」として、①大日経及び大日経義釈に違する失、②金剛頂経に違する失、③守護経に違する失、④菩提心論に違する失、⑤衆師の説に違する失、を挙げている。
 さて、ここでは五失の一つ一つについて解説することはしないが、大聖人は法華真言勝劣事において「然るに出す所の大日経の住心品を見て他縁大乗・覚心不生・極無自性を尋ぬるに名目は経文に之有り然りと雖(いえど)も他縁・覚心・極無自性の三句を法相・三論・華厳に配する名目は之無し、其の上覚心不生と極無自性との中間に如実一道の文義共に之無し、但し此の品の初に『云何(いか)なるか菩提・謂く如実に自心を知る』等の文之有り、此の文を取つて此の二句の中間に置いて天台宗と名づけ華厳宗に劣るの由之を存す、住心品に於ては全く文義共に之無し」(一二〇㌻)と述べられている。
 これは安然の指摘する五失のうち、①の大日経及び大日経義釈に違する失にあたる。
 弘法は大日経の住心品(正確には入真言門住心品)の第一の文に基づいて、十住心の立て分けを作ったと称しているのであるが、たしかに他縁大乗、覚心不生、極無自性という意味の言葉は経文にある、しかし、この三句をそれぞれ法相宗、三論宗、華厳宗に配分したのは弘法の独断にすぎないし、更に、覚心不生と極無自性との間に立てた如実一道は、その名前も意義も経にはないのに、住心品の初めに、菩薩とは何であるかとの問いに答えて、如実(ありのまま)に自己の心を知ることである、と述べているのを、弘法は勝手に如実一道という名を作りだして挟(はさ)み込み、しかもこれに天台宗を割り振ったにすぎない、と大聖人は指摘されている。
 大聖人は続いて「菩提心論の文に於ても法華・華厳の勝劣都(すべ)て之を見ざる上、此の論は竜猛菩薩の論と云う事上古より諍論(じょうろん)之れ有り、此の諍論絶えざる已前に亀鏡に立つる事は竪義(りゅうぎ)の法に背く、其の上善無畏・金剛智等評定有つて大日経の疏義釈を作れり一行阿闍梨の執筆なり、此の疏義釈の中に諸宗の勝劣を判ずるに法華経と大日経とは広略の異なりと定め畢(おわ)んぬ」(一二一㌻)と述べられている。これは、安然指摘の五失のうち、④の菩提心論に違する失と⑤の衆師に違する失に当たる。
 弘法が十住心の勝劣を判ずるにあたり依った菩提心論自体、果たして竜猛菩薩、すなわち竜樹が著したものであるかについて古来から論議があり、そのような著作を亀鏡(規範)として勝劣を判ずることそれ自身が竪義の法、すなわち法門や教理を立てる原則に違背している。更に、その菩提心論にもない法華・華厳の勝劣を勝手に立てて、菩提心論に違背しているのである。
 また、善無畏等が一行阿闍梨に説いて執筆させたとされる大日経義釈の中では、法華経と大日経との間に勝劣を認めず広・略の異なりだけであるとしているのに、弘法が法華経は大日経の三重の劣であると言うのは善無畏や金剛智といった密教の「衆師」に違背していることになるのである。
 ゆえに「空海の徳貴しと雖も争(いかで)か先師の義に背く可きやと云う難此れ強し」(一二一㌻)と結ばれているのである。

 覚鑁(かくばん)の法華は真言の履取(はきものとり)に及ばずと舎利講の式に書かれたるは舌に任せたる言(ことば)なり

 覚鑁の言葉は舎利供養式という書の中に次のように記されている。すなわち「第一に法身に帰命して菩提を発すとは、崇高なる不二摩訶衍(ふにまかえん)の仏、驢牛(ろご)の三身の車を扶(たす)くることあたわず。秘奥なるは両部漫荼羅の教、顕乗の四法は履を採(と)るに堪えず」とある。
 覚鑁はここで、帰命すべき人(仏)と法(教)について顕教と真言密教とを対比した形で法華経等を誹謗している。
 仏に関しては「崇高なるは不二摩訶衍の仏」すなわち法身の大日如来であるとし、これに対し、顕教の教主である釈尊を「驢牛の三身」として、衆生を彼岸へ渡す車は引っぱれないと貶(おとし)めている。また、法に関しては、真言密教の両部(胎蔵界・金剛界)漫荼羅の教えこそ秘奥であり、それに比べると、顕乗の四法はその履物を取るにも堪えないとしている。顕乗とは顕教のことで、四法は法相・三論・華厳・法華の法をさしている。
 そのことは大聖人がこの文を撰時抄に引用されて、次のように釈されているところからも明らかである。すなわち「顕乗の四法と申すは法相・三論・華厳・法華の四人、驢牛の三身と申すは法華・華厳・般若・深密経(じんみつきょう)の教主の四仏、此等の仏僧は真言師に対すれば聖(正)覚・弘法の牛飼・履物取者(はきものとり)にもたらぬ程の事なりとかいて候」(二七八㌻)と。
 いずれにしても、覚鑁の主張は、何ら経文や道理を裏づけとせず主観的に法華経をけなしているだけなので、大聖人は何の根拠もない舌に任せた言葉にすぎない、と一蹴されている。

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