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真言七重劣事・第八章 三宝の立て方の誤りを突く

            真言七重劣事

        第八章 三宝の立て方の誤りを突く

本文(一三三㌻一行~一三三㌻終)
  日本国仏神の座席の事
 問う吾が朝には何(いず)れの仏を以て一の座と為し何れの法を以て一の座と為し何れの僧を以て一の座と為すや、答う観世音菩薩を以て一の座と為し真言の法を以て一の座と為し東寺の僧を以て一の座と為すなり。
 問う日本には人王三十代に仏法渡り始めて後は山寺種種なりと雖(いえど)も延暦寺を以て天子本命(ほんみょう)の道場と定め鎮護国家の道場と定む、然して日本最初の本尊釈迦を一の座と為す然らずんば延暦寺の薬師を以て一の座と為すか、又代代の帝王起請(きしょう)を書いて山の弟子とならんと定め給ふ故に法華経を以て法の一の座と為し延暦寺の僧を以て一の座と為す可し、何ぞ仏を本尊とせず菩薩を以て諸仏の一の座と為すや。
 答う尤(もっと)も然る可しと雖も慈覚の御時・叡山は真言になる東寺は弘法の真言を建立す故に共に真言師なり、共に真言師なるが故に東寺を本として真言を崇む真言を崇むる故に観音を以て本尊とす真言には菩薩をば仏にまされりと談ずるなり、故に内裏(だいり)に毎年正月八日の内道場(ないどうじょう)の法行わる東寺の一の長者を召して行わる若(も)し一の長者暇有らざれば二の長者行うべし三までは及ぼす可からず云云、故に仏には観音・法には真言・僧には東寺法師なり、比叡山をば鬼門の方とて之を下す譬えば武士の如しと云うて崇めざるなり故に日本国は亡国とならんとするなり。
 問う神の次第如何、答う天照太神を一の座と為し八幡大菩薩を第二の座と為す是より已下の神は三千二百三十二社なり。

通解
  日本国の仏神の座席の順序についての事。
 問う。我が国ではどの仏を第一の座とし、どの法を第一の座とし、どの僧を第一の座としているか。
 答える。観世音菩薩を第一の座とし、真言の法を第一の座とし、東寺の僧を第一の座としている。
 問う。日本には人王三十代の時に仏法が渡って後は、山寺は種々あるけれども、延暦寺を天子本命の道場と定め、鎮護国家の道場と定めている。したがって、日本に最初に伝えられた本尊である釈迦仏を仏の第一の座とするか、そうでなければ、延暦寺の薬師如来を第一の座とするかであろう。また代々の帝王は起請文を書いて延暦寺の弟子となろうと定められているのであるから、法華経を法の第一の座とし、延暦寺の僧を僧の第一の座とすべきである。どうして、仏を本尊としないで、菩薩を諸仏の一の座とするのか。
 答える。当然そうあるべきであるけれども、慈覚のときに比叡山は真言宗となり、東寺は弘法の真言宗を立てている。ゆえにともに真言師なのである。ともに真言師であるがゆえに東寺を根本として真言を崇め、真言を崇めるゆえに観音菩薩を本尊とするのである。真言では菩薩は仏よりも勝っていると説くのである。ゆえに内裏で毎年正月八日からの内道場での修法は、東寺の第一の長者を召して行われるのである。もし第一の長者が暇がないときは、第二の長者が行うことになっており、第三まで及んではならないという。ゆえに仏は観音菩薩、法は真言、僧は東寺の法師としているのである。比叡山を鬼門の方角にあるといって下し、譬えば武士のようなものであるといって崇めない。ゆえに日本国は亡国となろうとしているのである。
 問う。神の序列はどうなっているのか。答える。天照太神を第一の座とし、八幡大菩薩を第二の座とするのである。これ以下の神は三千二百三十二社である。

語訳
観世音菩薩
 梵名アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokiteśvara)、音写して阿縛盧枳低湿伐羅(あばろきていしゅばら)で、観世音と意訳し、略して観音という。光世音、観自在、観世自在とも訳す。異名を蓮華手菩薩、施無畏者、救世(くぜ)菩薩ともいう。法華経観世音菩薩普門品第二十五には、三十三種の身に化身して衆生を救うことが説かれている。

観世音菩薩を以て一の座と為し
(語訳に解説なし)
〈追記〉
 密教で仏を本尊とせず、観世音菩薩を本尊と立てる依拠として、観世音菩薩の尊格は仏に等しいとの説がある。(1)もとは「正法明如来(しょうほうみょうにょらい)」という古仏であったが、衆生の救済のため人間界に近い菩薩の身となったという。「南無過去正法明如来、観世音菩薩として現前す」云々(四明知礼『千手眼大悲心呪行法』より一部抜粋)とある。(2)密教では「三輪身」を説き、如来が教導すべき対象である衆生の性質に合わせて三種の姿を取るとする。①自性輪身(本来の仏そのもの)②正法輪身(菩薩の身を現し、やさしく穏やかに正法を護持せしめる姿)③教令輪身(悪逆で教化しがたい衆生に対して現す凶猛忿怒の姿)である。ゆえに菩薩を仏の教化時の姿と捉えるのである。金剛界曼荼羅においては、大日如来(自性輪身)・金剛波羅蜜菩薩(正法輪身)・不動明王(教令輪身)が三輪身となる。したがって不動明王を本尊と立てるときは法身・大日如来を拝することに等しいが、観世音菩薩は登場しない。胎蔵曼荼羅では、観世音菩薩は蓮華部院の主尊となっている。要するに広義では、すべての菩薩は法身大日の化身たりうるが、「観世音菩薩を以て一の座と為し」との言葉は導きがたい。なお、密教では加持祈祷による現世利益が強調されることから、観音を〝(現世利益における)一の座〟と立てることは首肯しうる。法華経の観世音菩薩普門品第二十五に「普門示現」(『妙法蓮華経並開結』六三八㌻ 創価学会刊)とあり、三十三身を示現して普(あまね)く衆生を教化すると説かれる意より、六観音信仰が発展した。摩訶止観には、六道の煩悩を破砕するという「大悲・大慈・師子無畏・大光普照・天人丈夫・大梵深遠」の六体の観音が説かれる。これが密教の教義により、基本身の「聖観音(しょうかんのん)」と変化観音である「千手・十一面・如意輪・准胝(じゅんてい)・馬頭」の六観音となり、不空羂索(ふくうけんじゃく)を加えて七観音という。いずれにしても、経・典を依処として「観世音菩薩を以て一の座と為し」と論ずることは叶うものではない。あるいは、観音堂を建てた慈覚の末流等が言い出したものであったのか、詳細は不明である。

東寺の僧を以て一の座と為す
(語訳に解説なし)
〈追記〉
 本抄に「内裏(だいり)に毎年正月八日の内道場(ないどうじょう)の法行わる東寺の一の長者を召して行わる若(も)し一の長者暇有らざれば二の長者行うべし三までは及ぼす可からず云云」とあり、宮中の行事に天台僧の出番がない例として挙げられている。皇室との関係においても、真言宗の僧が優位にあったことをいわれたもの。

人王三十代
 第三十代天皇のこと。欽明天皇をさす。第三十代天皇は、現在では欽明の次の敏達としているが、日本書紀等では第十四代仲哀天皇の次に神功皇后を入れているために欽明にあたる。
〈追記〉
 大正十五年(一九二六年)十月の皇統譜令施行以降、神功皇后は歴代天皇の代数から外された。

日本最初の本尊釈迦
 日本に初めて将来された釈迦の仏像のこと。日本書紀には欽明天皇の十三年(五五二年)十月に百済の聖明王が使者を遣わして金銅の釈迦仏や若干の経論等を献じたと記され、これが日本における公式の仏教伝来の年とされてきたが、五三八年という説もある。
〈追記〉
「上宮聖徳法王帝説」や「元興寺伽藍縁起并流記資財帳」により、現在は五三八年とする説が有力である。

真言を崇むる故に観音を以て本尊とす
(語訳に解説なし)
〈追記〉
 密教では「三輪身」として、仏は①自性輪身(本来の仏)②正法輪身(柔和な菩薩)③教令輪身(忿怒の明王)と示現する。これを法報応の三身に配すると①は法身で真理そのものを体とし、人には見えない。②③は応身で衆生の前に現れる姿である。ゆえに真言宗では、堂宇に本尊として安置されるのは、法身の大日如来よりも、十一面観音像(西新井大師)や不動明王像(成田山新勝寺)などの応身の像が多く、こうした事実を指していわれたものか。ただし観音像を本尊と立てる真言宗寺院は多いが、「真言を崇むる故に観音を以て本尊とす」との一方的な言説は見受けられない。あるいは、本抄の第七章において(東塔では)「中堂……御本尊は薬師如来なり」「講堂……御本尊は大日如来なり」、西塔は「釈迦堂」で本尊は釈迦如来、東塔・西塔ともに如来(仏)像を本尊と祀るのに比し、横川では「観音堂 ─ 慈覚の建立」とあり、慈覚が建てた観音堂を中心とする横川の当時の学生たちが、東塔・西塔との対抗意識から漏らした口吻であったのか。また、一口に台密といっても内容は一律ではなく、根本大師流・慈覚大師流・智証大師流に分かれ(根本三流)、さらに慈覚大師流は十流に分かれ、総じて十三流といった。「真言を崇むる故に観音を以て本尊とす」とは理屈の裏付けなどはなく、観音堂を建てた慈覚の末流等が、山内で幅を利かすために、そのように嘯(うそぶ)いたことであったのかもしれないが、真偽のほどは不明である。

真言には菩薩をば仏にまされりと談ずるなり
(語訳に解説なし)
〈追記〉
 真言宗で本尊を菩薩と立てる場合、観音像など多くあるが、金乗院平間寺(川崎大師)では弘法大師像を本尊とする。祖師の御影像を祀る例は諸宗において珍しくないが、本尊と立てるのは真言宗ぐらいしかないのではなかろうか。密教の「三輪身」の説では菩薩の尊格は仏と等しいとされるゆえに、宗祖の弘法を菩薩と立て、同時に応身の仏と見るのであろう。そこまでは真言宗側の教義に依るのであろうが、「菩薩をば仏にまされり」との言はあまりに不遜である。真言宗によると弘法は〝菩薩〟であるゆえに、〝弘法は大日をも超える〟との謂いとなる。〝人師が仏に勝る〟などと、仏を下す思い上がりの暴論であるとの謗りは免れない。

内道場(ないどうじょう)の法
 宮中に設けられた仏教道場で修する法のこと。ここでは、弘法の上奏によって承和元年(八三四年)から始められた後七日御修法(ごしちにちのみしゅほう)をいう。毎年正月八日から十四日までの七日間、唐の内道場に準じて設置された真言院で玉体安寧と鎮護国家を祈念して行われた密教の修法で、真言院御修法ともいわれた。弘法以後、東寺の長者によって行われた。

長者
 ここでは東寺の座主のこと。弘法の弟子である実恵が初めて任ぜられた当時は一人であったが、後に一の長者から四の長者までが置かれるようになった。

鬼門の方
 鬼が出入りするとされる方角のこと。家または城郭の東北(丑寅)の隅をいう。古来この方角を忌み嫌う中国の俗信から出たもので、陰陽道では諸事に忌むべき方角とされた。後に仏教にも取り入れられ、王城などの守護のためこの方向に寺院を建てて鬼除けとした。比叡山延暦寺が平安京(京都)の東北にあるのは、これによったものといわれる。

八幡大菩薩
 八幡神に対して奉られた菩薩号。正八幡大菩薩ともいう。古くは農耕を守る神とされていた。天応元年(七八一年)朝廷は宇佐八幡に鎮護国家・仏教守護の神として八幡大菩薩の神号を贈った。以来、全国の寺の鎮守神として八幡神が勧請されるようになった。日本の鎮守(ちんじゅ)であり、日本国百代の王を守護する誓願を立てたと伝えられる。また、武士の台頭とともに、とくに源氏に厚く信仰され、武士の守護神とされた。日蓮大聖人は、諸天善神の一つとされている。

三千二百三十二社
 平安・鎌倉時代頃の神社の総数。延喜式の中の神名帳には、宮中および全国に鎮座する神が三千百三十二座あると記されている。

講義
 今までは図示の形で諸経の優劣等を示されたが、ここは問答形式で、初めに日本国が立てている三宝について論じられている。
 問いは、日本国においては、いかなる三宝を第一の座に据えているかというものであるが、それに対する答えは、観世音菩薩を仏宝の第一とし、真言の法を法宝の第一とし、真言宗東寺の僧を僧宝の第一としているというものである。
 この答えに対し、問者は当然に疑問を起こす。まず、日本に仏法が渡ってきてから、多くの宗派が興ったが、延暦寺を天子本命の道場・鎮護国家の道場と定められたと述べている。これについては、前章までのところでみてきたとおりである。
 そのことを前提として三宝の在り方を考えれば、本尊は日本に最初に将来された釈迦仏を第一の座に据えるべきで、そうでなければ、伝教大師が根本中堂の本尊に定めた薬師如来を第一の座に置くべきである。また、桓武天皇以来、代々の天皇が延暦寺に帰依してきたことを考えれば、法華経を法宝の第一に、延暦寺の僧を僧宝の第一に据えるべきである、と述べている。それなのに、なぜ仏ではなく菩薩を仏宝の第一としているのかという疑問が提起される。
それに対する答えは次のとおりである。
 ――まさにそのとおりであるが、慈覚の時に比叡山は真言となり、東寺はもともと弘法の真言を立ててきたから、比叡山延暦寺の僧も東寺の僧もともに真言師なのである。そこで、延暦寺の徒は東寺を根本として崇めるようになり、また真言では仏より菩薩が勝れるとして、観音を本尊としたのである。また、毎年一月八日からの内道場の法に際しては東寺の長者がこれを行うことになっている。ゆえに、仏宝には観音、法宝には真言、僧宝には東寺の法師を立てているのである――と。
 そればかりでなく比叡山延暦寺が王城の鬼門に建てられていることは王城を守護するためで、これは武士のようなものであるから、武士は本来、崇められるべきものでないのと同じように、比叡山を崇める必要はないとしているのである。以上のように、日本の国がなぜ真言に毒された三宝を立てるようになったかを明らかにされたうえで、ゆえに日本国は亡国となろうとしているのである、と指摘されている。
 次に諸天善神の次第について触れられ、天照太神を第一に、八幡大菩薩を第二に据えるべきであり、それ以下の神々は三千二百三十二社あるとされている。
 なお、本抄はもともと覚え書きと思われるが、それにしてもいかにも中途で切れてしまっている観があり、恐らくもっとこのあとにあったが欠失したのであろう。

出典『日蓮大聖人御書講義』第三巻上(編著者 御書講義録刊行会 発行所 聖教新聞社)

                     真言七重劣事 ―了―

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