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念仏無間地獄抄・第五章 善導が無間地獄に堕ちた現証を示す

            念仏無間地獄抄

      第五章 善導が無間地獄に堕ちた現証を示す

本文(九九㌻一一行~一〇〇㌻五行)
 夫(そ)れ一切衆生皆成仏道の法華経、一たび法華経を聞かば決定(けつじょう)して菩提を成ぜんの妙典善導が一言に破れて千中無一虚妄(こもう)の法と成り、無得道教と云はれ平等大慧の巨益(こやく)は虚妄と成り多宝如来の皆是真実の証明の御言妄語と成るか十方諸仏の上至梵天の広長舌(こうじょうぜつ)も破られ給ぬ、三世諸仏の大怨敵と為り十方如来成仏の種子を失う大謗法の科(とが)甚(はなはだ)重し大罪報の至り無間大城の業因なり。
 之に依つて忽(たちまち)に物狂いにや成けん所居の寺の前の柳の木に登りて自ら頸(くび)をくくりて身を投げ死し畢(おわ)んぬ邪法のたたり踵(きびす)を回(めぐら)さず冥罰(みょうばつ)爰(ここ)に見(あらわれ)たり、最後臨終の言に云く此の身厭(いと)う可し諸苦に責められ暫(しばら)くも休息(くそく)無しと即ち所居の寺の前の柳の木に登り西に向い願つて曰く仏の威神以て我を取り観音勢至来つて又我を扶(たす)けたまえと唱え畢つて青柳の上より身を投げて自絶(じぜつ)す云云。
 三月十七日くびをくくりて飛たりける程にくくり繩や切れけん柳の枝や折れけん大旱魃の堅土(かたつち)の上に落て腰骨を打折(くじき)て、二十四日に至るまで七日七夜の間悶絶躄地(もんぜつびゃくじ)しておめきさけびて死し畢(おわん)ぬ、さればにや是程の高祖をば往生の人の内には入れざるらんと覚(おぼ)ゆ。
 此事全く余宗の誹謗に非ず法華宗の妄語にも非ず善導和尚自筆の類聚伝(るいじゅでん)の文なり云云、而も流を酌(く)む者は其の源を忘れず法を行ずる者は其の師の跡(あと)を踏む可し云云浄土門に入つて師の跡を踏む可くば臨終の時善導が如く自害有る可きか、念仏者として頸をくくらずんば師に背く咎(とが)有る可きか如何。

通解
 一切衆生が皆、仏道を成ずるのが法華経であり、一たび法華経を聞けば必ず菩提を成ずる妙典であるのに、善導の一言に破られて千中無一、虚妄の法となり、無得道教といわれ、平等大慧の大きな利益は虚妄となり、多宝如来の「皆是れ真実なり」の証明の御言葉も妄語となってしまうのか。十方諸仏の、上は梵天にまで至った広長舌も破られてしまった。
 三世諸仏の大怨敵となり、十方如来の成仏の種子を失うこの大謗法の科(とが)は甚だ重い。大罪報の極地であり、無間大城の業因である。
 これによって、(善導は)たちまち物狂いにでもなったのであろうか、住んでいる寺の前の柳の木に登って自ら頸(くび)をくくって身を投げ、死んでしまった。邪法の祟りはあと戻りできず冥罰がここに現れた。最後臨終の言葉に「この身は厭うべきである、諸苦に責められて暫くも休む暇がない」と。そして、住んでいる寺の前の柳の木に登り、西に向かい願っていうには「仏の威神をもって我を受け取り、観音・勢至菩薩は来って我を扶(たす)けたまえ」と唱え終わって青柳の上から身を投げて自ら命を絶った。
 三月十七日、首をくくって飛んだところが、くくった縄が切れたのであろうか、柳の枝が折れたものか、大旱魃の堅い土の上に落ちて腰骨を打ち折って、二十四日に至るまで七日七夜の間、悶絶してはい回り、わめき叫んで死んでしまった。そもそも、これほどの高祖が往生の人の内には入れられなかったものと思われる。
 このことは全く余宗が誹謗して言っているのではない。法華宗が作った妄語でもない。善導和尚自筆の類聚伝の文である。しかも流れを酌む者はその源を忘れず、法を行ずる者はその師の跡を踏むべきである。浄土門に入って師の跡を踏もうとするなら、臨終の時、善導のように自殺するべきか。念仏者として頸をくくらなければ、師に背く咎(とが)があるのではないだろうか。

語訳
上至梵天の広長舌(こうじょうぜつ)
 古代からインドでは言葉の真実を証明するのに舌を出す風習があり、舌が長ければ長いほど、その言説が真実であることの確かな証明とされ、また、舌が広く長い者には虚妄がないとされた。ゆえに広長舌相は不妄語をあらわす。法華経如来神力品第二十一に「広長舌を出(いだ)して、上(かみ)梵世に至らしめ」(『妙法蓮華経並開結』五六八㌻ 創価学会刊)とあり、十方分身の諸仏が梵天にまで届く長い舌を出して釈尊の諸説が真実であることを証明したとある。

此の身厭(いと)う可し諸苦に責められ暫(しばら)くも休息(くそく)無し
 法然の著「類聚浄土五祖伝」に「此の身、厭う可し。諸苦、逼迫(ひっぱく)す。情偽、変易して暫くも休息すること無し」(浄土宗全書九巻四二六㌻)とある。
〈追記〉
 情偽とは①まことと、いつわり。②ありのままのようす。変易とは変わること。

悶絶躄地(もんぜつびゃくじ)
 立っていることができないほど悶(もだ)え苦しみ、地をはいずり回ること。「悶絶」は悶え苦しんで意識を失うこと。「躄地」は両足で立つことができず、地をはい回ること。「躄」は足の立たないこと。

類聚伝(るいじゅでん)
 法然の著・類聚浄土五祖伝のこと。中国浄土宗の祖師といわれる曇鸞・道綽・善導・懐感・小康の五人の伝歴を記したもの。善導の伝では、自害の様子が記されている。本抄で「善導和尚自筆の類聚伝の文」とあるが、善導の著書としては伝わっていない。

講義
 仏説に背き、法華経を誹謗して、無間地獄の業因をつくった善導が、自殺を図って失敗し、苦悶の末に死んだ事実が念仏側の書物に記されていることを明かされている。
 前章に述べられているように、「一人として成仏しない人はない」と説かれている法華経を、善導は「千中無一」虚妄の法とし、皆成仏道の経であるのに未得道教だとし、「平等大慧」、すなわち一切衆生を平等に利益する仏の智慧である法華経の大利益を虚妄とし、多宝如来が「皆是れ真実である」と証明した言葉も妄語とし、十方の諸仏が梵天にまで届かせた広く長い舌相も破ってしまったのである。
 この善導の説は、三世の諸仏の大怨敵となり、十方の如来の成仏の種子を失わせるものであって、その罪は甚だ重く、無間地獄に堕ちる業因なのである、と指摘されている。
 そして、そのためか、善導は気が狂い、住んでいた寺の前の柳の木に登って、自ら首を括(くく)り、身を投げて死んだのである。
 大聖人はその事実を、邪法の祟りは後戻りができず、冥罰がここに現れたのである、と仰せになっている。正法を誹謗して邪法を行じた悪業の報いが、自身の生命に刻まれて、その結果として気が狂い、自ら命を絶つという不幸を招いたことを、冥罰とされているのである。
 しかも、善導の自害のありさまは、実に悲惨なものだった。善導が、「この身は厭うべきである。もろもろの苦しみに責められて少しの間も休息がない」といい、住む寺の前の柳の木に登り、西方に向かって「願わくは仏の威神をもって我を受け取り、阿弥陀仏の脇士の観音・勢至菩薩よ、来って我を助けたまえ」と唱えて、柳の木の上から身を投げて自殺した、と述べられているのは、法然の著・類聚浄土五祖伝の中の善導伝を引かれたものである。
 さて、三月十七日に首を括(くく)って飛んだのであるが、縄が切れたのか、柳の枝が折れたものか、旱魃のために堅くなっていた地面の上に落ちて、腰骨を打ち折ってしまい、三月二十四日までの七日七夜の間、悶(もだ)え苦しみ、地をはい回り、わめき叫んで死んだ、と述べた記録があったようである。
 大聖人は、この最期の様子から、これほどの念仏の高祖も、往生する人の中に入れなかったものと思われる、と仰せになっている。もし極楽へ往生したのなら、三尊が来迎して穏やかな最期であったはずだからである。
 しかも、こうした善導の最期の様子は、他宗が誹謗して作り上げたものでも、法華宗がうそをついたものでもなく、善導自筆の類聚伝の文であるとされている。善導が自分で、自らの臨終の有様を書くわけはないから、これは法然が書いた類聚浄土五祖伝のことと考えられる。
 ともあれ、流れを酌む者はその源を忘れてはならず、法を行ずる者はその師の跡を踏むべきである、とされているのだから、浄土門に入って師の跡を踏もうとするなら、臨終の時には師の善導のように自害すべきではないか、念仏者として首を括らなければ、師に背く罪になるのではないだろうか、と念仏者を厳しく責められている。
 もとより、これは「師弟」という倫理の上から皮肉って言われているのであるが、死後の往生を願う念仏思想は、無意識的に、この世の生を厭う心を起こさせるという生命への影響力もある。上野殿御返事には、「念仏宗と申すは亡国の悪法なり(中略)善導と申す愚癡(ぐち)の法師がひろ(弘)めはじめて自害をして候ゆへに・念仏をよくよく申せば自害の心出来し候ぞ」(一五〇九㌻)と述べられているのは、そうした知らずしらず影響されることを言われたものである。
 なお、善導だけではなく、大聖人当時の念仏者の臨終の相が悪かったことについても、「而るに善導和尚の十即十生と定め又定得往生等の釈の如きは疑無きの処に十人に九人往生すと雖(いえど)も一人往生せざれば猶不審発(おこ)る可し、何(いか)に況や念仏宗の長者為(た)る善慧・隆観・聖光(しょうこう)・薩生(さつしょう)・南無・真光(しんこう)等・皆悪瘡等の重病を受けて臨終に狂乱して死するの由之を聞き又之を知る、其の已下の念仏者の臨終の狂乱其の数を知らず、善導和尚の定むる所の十即十生は闕(か)けて嫌える所の千中無一と成んぬ」(当世念仏者無間地獄事、一〇五㌻)等と指摘されている。

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